女の敵は女〜シズノ2

元彼と別れて以来

私を心配したケイシは頻繁に連絡をくれ、

それまでより会う回数は増えた。


それを知ったシズノがまた騒ぎだしたのだ。


私とケイシは

本当に幼馴染みで

親友。

それ以上でもそれ以下でもない。


「山本はケイシを利用している」


それは

もしかしたら

少しはあったかもしれない。


昔からケイシには頼って甘えてばかりだ。


でも

「山本、ケイシと結婚するの?」

と、飲み仲間の1人から聞かれてびっくりした。


言いにくいんだけど、、

と前置きされて

飲み仲間からシズノが話していた全てを聞いた。


私とケイシはずっと前から肉体関係で繋がっていた。

妊娠出来ない山本だからケイシも都合よく関係を続けていた。

お互い年も年だし

寂しい同士で結婚することにしたようだ。

山本はケイシの稼ぎをあてにして専業主婦になるつもりだ。



ふざけるな!


頭に血が上って

何を言っていいかわからなかった。


ただ、

その仲間が

「信じてなかったから確かめたんだよ」

と言ってくれたことが救いだった。


でも

他にもいた数人は

鵜呑みにしていたようだと。。


その数人は

知り合い程度だけれど

どこでどう繋がりが出来て

話が伝わるかわからない。


ひとつも当っていない

完全なデマだ。


とにかくその飲みの場にいたメンバーに誤解だと伝えてもらうことにした。


シズノはどうしよう。


本人とやり合うのは得策ではないと考えた。


シズノは口が立つ。


また周囲にデマを流される可能性も大きい。


とにかく

シズノが私に攻撃出来なくなる方法で

シズノとの関係を絶とうと思った。

女の敵は女〜シズノ

大木自身は私に隠していた本当の離婚理由を

大木に断りもなく

更に言えば

少し嬉しそうに話してきたシズノ。


彼女も同級生飲み仲間のひとりだ。


独身。

彼氏なし。

私が知る限り恋人がいたことはない。


飲み仲間の中で

少しでも男女の仲に発展するような発言や動きがあると

彼女は激しく反応する。


「あの二人怪しいよね!?」

「あの男のどこがいいんだろうね!?」

「あの子男にだらしないよね!?」


皆いい大人だし

私やシズノが実害を受けたわけでもないのだから

関係ない。


共感を求めないで欲しい。


だが、

「いいんじゃない?」

なんてそっけない返事をするたび


「山本もああいうの好きなの!?」

「山本も男に媚びるんだ!?」


と攻撃される。


面倒くさい。


シズノは本当は嫉妬しているのだろう。


決して見た目が悪いわけではないのに、

むしろ美人の部類なのに、

異性から声をかけられることがほとんどないそうだ。


彼女の

心に渦巻く妬み僻みは

表情に現れているし、

言葉も棘がある。


よく、男は外見に騙されると聞くが

シズノに関しては

美しい外見でも覆いきれないものがあるのだろう。


闇だ。


ただ、

私はシズノの闇に

同情することは今はもう出来ない。


その闇は私には毒として振りかかってきたから。

男女の友情〜ケイシ&大木編2

大木が結婚したのは30歳。


元の奥さんは大木と同じ大学出身の才女。


結婚式の二次会でお会いしたきりだけど

可愛らしくて謙虚な方だった。


年齢的にも奥さんはすぐにでも妊娠出産をと強く望んでいたが

なかなか授かれず悩んでいたそうだ。


結婚して3年経ち

奥さんは仕事を辞めた。


少しでもストレスを減らして

子どもを授かりやすい環境をと

考えたらしい。


ところが

そのことが裏目に出てしまった。


仕事をバリバリこなしていた熱量は

子どもを授かるということに

完全に移行した。


食事制限を徹底し

さらには

風水に拘ってみたり

有名な占い師に会うために遠くまで出向いたりとエスカレートしていく。


がんばればがんばるほど

毎月残念な結果を知る時の

落胆は大きかったと思う。


大木は責任を感じ

検査を渋る奥さんに内緒で

一人検査を受けたそうだ。


結果は正常だった。


原因は自分ではない。

ホッとしたのはもちろんだが

それ以後

子どもが授かれないことで落ち込む奥さんに

正直優しくなれなくなっていった。


また、

仕事をしていた時は

目標に向かってキラキラ輝いていた奥さんが

身なりも気にせず

暗い顔ばかりしている我が家に帰ることが

憂鬱になってしまったらしい。


理由を作っては

わざと遅い時間に帰宅したり

休日も一人で外出したりと

寄り添うどころか逃げてしまった。


大木の性格からして

そんな自分をも責めて苦しんだだろう。


奥さんは当然

子どもを授かれない不安に重ね

夫への不信感で

ヒステリックに泣いたり怒鳴ったりする様になってしまったという。


先に離婚を切り出したのは

奥さんの方だったそうで、


このまま一緒にいたら自分の精神状態までもが修復不可能になる。

そう告げられたそうだ。


大学時代から交際8年、結婚生活7年

15年間共に過ごしてきた人と

傷つき傷つけ合いながら

お別れするなんて

世知辛い。


奥さんも鬱状態で

本当に辛かったと思う。


大木の憔悴っぷりも相当なものだった。


半年後

奥さんは社会復帰して

職場で活躍しているとの噂を耳にし

大木もやっと安心したと言う。




ただ私は

大木本人からは離婚の理由は

性格の不一致

としか聞いていない。


この話は

ケイシでもない別の同級生、シズノから聞いた。



大木は私に気を使ったんだろうな。




私は


どんなに努力しても


絶対に一生子どもを授かることは出来ない。




生まれつきのもの。



そういう体で生きていくしかないから


幸せの選択肢が

人より少ないことはとっくに覚悟していた。


一度は受け入れてくれたとしても

心変わりをするのはしかたない。


わかってる。


でも、

人を信じることまで禁じなきゃいけないとしたら

あまりにも惨めだから

私は

おとぎ話みたいだと笑われても

幸せになりたいと

まだ足掻いている。