大木もスーツだ。
大手の製薬会社で働くエリートの彼は
やはり高級感漂うスーツを着ている。
中学時代から同級生とは違う
大人びた雰囲気があったし
それは冷たい印象を持たれてしまうことも多かったと思う。
きっと、今も。
大木とは中学時代はほとんど接点はなく
こうして呑みに行く様になったのは
もちろんケイシ繋がりで
社会人になってからだ。
いつもどちらかに相手がいたから
意識したことはない。
いや、
違う。
意識しないようにしていた。
私は。
勘違いでなければ
大木も。
時々見せる優しい言葉や表情。
私は聞こえないふりをしたり
気づかないふりをしたり
冗談に変えて
その先に進まない様にしていた。
大木もそれ以上踏み込んでくることもなかった。
今、私は寂しいからなのだろうか。
大木の
いつもの自信に満ち溢れた姿勢のいい姿に
ドキッとした。
大木は独身だ。
バツイチではあるけれど。