男女の友情〜ケイシ&大木編

大木もスーツだ。


大手の製薬会社で働くエリートの彼は


やはり高級感漂うスーツを着ている。


中学時代から同級生とは違う

大人びた雰囲気があったし


それは冷たい印象を持たれてしまうことも多かったと思う。


きっと、今も。


大木とは中学時代はほとんど接点はなく

こうして呑みに行く様になったのは

もちろんケイシ繋がりで

社会人になってからだ。


いつもどちらかに相手がいたから

意識したことはない。



いや、


違う。


意識しないようにしていた。


私は。



勘違いでなければ


大木も。



時々見せる優しい言葉や表情。



私は聞こえないふりをしたり

気づかないふりをしたり

冗談に変えて

その先に進まない様にしていた。


大木もそれ以上踏み込んでくることもなかった。



今、私は寂しいからなのだろうか。



大木の

いつもの自信に満ち溢れた姿勢のいい姿に

ドキッとした。



大木は独身だ。



バツイチではあるけれど。

男女の友情〜ケイシ編2

それからケイシは

暇さえあればLINEを送ってくれた。


「今日は雨だけどがんばろう!」

とか

「外回り中。疲れた〜!」

とか

たいした内容じゃないけど

気を使ってくれてるのがわかって

ありがたいなと思う。


たまに

「こんな虫いた!」

という画像付きもあって

それは少し迷惑だったけど。



ある日の仕事終わり、

私とケイシが地元に着く時間がほぼ一緒

ということで

地元駅で呑むことに。


場所は

昔から集合はココ!と決めている焼き鳥屋さん。


お店に着くと

もうケイシが座っていた。


仕事終わりのスーツ姿。

いつもよりかっこよく見える。


って


よく聞くけど

そんなことはない。

いつものケイシだ。


「大木も来るよ」


大木。

彼は中学校からの同級生。


ケイシ同様

男友達として時々呑みに行くメンバーのひとりだ。


「お疲れ〜!」


やはりスーツ姿の大木が合流した。

男女の友情〜ケイシ編

私には幼馴染みの男友達が数人いる。


幼い頃から同じ土地で暮らしているから

そういう者同士、

腐れ縁というほどでもなく

なんとなくつかず離れずいる感じだ。


その中でも

幼い頃から一番よく遊んだのがケイシ。

未だ独身。


自分のことを棚にあげてナンだけど

ケイシは結婚出来ないだろうな

と思う。


ルックスは悪くない、

学歴も二流ではあるけど大卒、

収入もまあ普通。


ただ、優しすぎるのだ。


昔から困ったことがあるといつも助けてくれた。


小学校時代は私が親に買ってもらえないようなお菓子をくれたし、

中学校時代はケイシの家にみんなでよく集まった。

ケイシに会う為というより

仲間が集まる場所を提供してもらっていた。


申し訳ない。


高校から大学を卒業するまでは

少し距離が出来て

会わなくなったけど、

就職してからまた

ストレスがたまると呼び出して呑みに行った。


だから今回も

私が連絡をしたら

「また何かあった?」

とすぐに察して

私の家に来てくれた。


うんうん、といつもの様に聞いてくれる。


ケイシは

「男ってなかなか自分から別れを切り出さないものだから余程の事情だろうね。

山本に心当たりがないなら相手側のね。

それを伝えないで逃げるように別れるのは思いやりに欠けるし未成熟な人間だね。

悔しいけどそういう人だったって割り切るしかないね。

年齢的に厳しいけどお互いがんばろうぜ!」

と。


厳しくも的確な分析。


そうか。


元彼は心底私が嫌いになったのかもしれない。


もしくは

元彼自身が抱えている地雷を

私が無意識に掘り起こして

嫌われたのかもしれない。


辛い。


わからないから余計に。


でも、

ただただ優しいだけのケイシが

大人の男になっていたことに

びっくりした。


年はもう立派なオジさんだから当たり前か。


私が知らなかっただけで

色々経験積んでたのかな。


この失恋で

初めてケイシが男だって

認識した。