復活の時

「一人になりたい。

山本ちゃをといると疲れる。

別れよう。」



ちゃを


ちゃお?


ちゃお☆


私、元彼に

そんな風に呼ばれたことなんてなかった。


あの時は、

内容とは裏腹な素っ気なさがショックで

勝手にいつも通りの呼び方で

「山本ちゃん」

って脳内変換して読んで

気づかなかった。


あー。


すっごい適当だー。


別れのセリフって

何回も考えて

読み直して

慎重に送る。

(いや普通は会って直接伝える)


そういうものでしょう?


私って

そんな扱いになってだったんだ。


しかも

私、これに何も返信してない。


なんか

そこまで気が回らなかったんだよね。


でも

あっちもそれ以降

何もアクション起こしてきてない。


あいつにとっちゃ

私達はもう

きれいさっぱり終わったことになってるんだろうな。


あの野郎は私と同じ年のいい大人なのに

てめえのケツも拭けない人だったんだ。


涙が出るより

笑えてきて、

それからものすごい

怒りがこみあげてきた。


絶対に見返してやる!!!

別れの時2

そうこうするうち、

元彼に振られて以来

初めての週末が来た。


仕事のある平日はまだ気が紛れていたけれど、

週末は無理だった。


今までお泊りデートだった週末を、

これからはひとりで過ごさなければいけない。


もう逃げられない。


振られたということから。


それも、

ひどい振られ方をしたということから。


今の自分はとてつもなく惨めだということから。


土曜日の朝、

振られてから初めて

元彼からとのLINEを開いた。


大好きだった

優しかった元彼との

キラキラした生活を私から切り離した

あの一本のLINE。


読み返したら

悲しくて寂しくて

溢れる涙を抑えることが出来なかった…


という自分を想像していた。


のに、


私は泣かなかった。



元彼の別れのセリフの中に

誤字を見つけてしまったから。

別れの時1

「私、山本は40歳を目前にし、5年間付き合っていた彼氏にLINEひとつで別れを告げられました。」



それは3ヶ月前。


あまりに突然で、

これが現実なのだと理解するのに1週間くらいかかった。


受け入れたくないというか、

考えたくないというか、

こうして文字にしたり口に出すことなんて

とてもじゃないけど出来なかった。


頭で考えたり、言葉にすると

涙が出てしまう。

涙が出たら止まらなくなってしまう。


壊れてしまう。


だから

いつも通りに起きて

仕事に行って、

昼休みには同僚とランチして

笑って、

帰ってお風呂に入って

ビール飲んで


ビール飲んで


ビール飲んで


飲んで飲んで

飲んで飲んで飲んで

飲んで飲んで飲んで飲んで


毎晩酔いつぶれて寝た。


悪い夢を見ないように、

限界を超えるまで

1人で飲んだ。


これまで家にいるより、

行きつけのお店や気のおけない仲間と

お酒を飲みお喋りすることが好きだった私が、

まっすぐに帰宅して1人で飲む。


現実を受け入れられないながらも

どこかでちゃんとわかってた。


行きつけのお店にも、

飲み友達との間にも、

元彼の存在が大きくて


そこにはもう私の居場所はないってこと。